大津市が安全基準に達していない公園の遊具を8年間放置していた問題で、市は事態を過小に見せかける説明を、ホームページに掲載していることが分かった。指定管理者の大津市公園緑地協会の説明とも食い違っている。
大津市は遊具の全体数を水増し
安全基準をクリアせず、修理が必要な遊具は、都市公園にある652基のうち156基。つまり、約4の1が使えない状態になっている。大津市公園緑地協会も同じ説明をしている。
しかし、大津市はホームページ上で、都市公園だけでなく児童遊園地にある遊具の数を加え、全体の数を大幅に水増し。「2000基ある遊具のうち、156基を修理する」と、修理が必要なのは全体の8%に過ぎないと説明している。
「使用禁止」でなく「使用停止」と表現
さらに、公園緑地協会は、「ハザードレベル3」の遊具が使用できない状態を「使用禁止」と表現している。一方、大津市は、いつになったら再び使えるかわからないのにもかかわらず、「使用停止」という言葉を使っている。このように、大津市の説明は、事態が深刻ではないと装う形になっている。
大津市の説明に問題あり
今回の安全基準未満の遊具156基を8年間放置していたことは、今年3月2日付の滋賀報知新聞で批判されたのが発端。滋賀報知新聞は、大津市と大津市公園緑地協会の責任のなすりつけ合いを問題視していた。大津WEB新報が、報道後の両者の対応を比較すると、大津市の説明に問題があることが明らかになった。
↓大津市のホームページ「都市公園における遊具の使用停止について(お知らせ)」
↓大津市公園緑地協会ホームページ/「都市公園使用禁止遊具の修繕状況について(お知らせ)」
↓2017年3月2日付の滋賀報知新聞
大津市「不適合」遊具156基、財源不足で8年放置
=修繕めぐって責任なすり合い=
◇大津
東京都や大阪市で今年1月、遊具による子どもの死亡・重体事故が相次ぐなか、大津市の都市公園で「不適合」と判定された遊具156基が、8年たっても改修されずに放置されていることが本紙取材で分かった。指定管理者として同市から公園管理を委ねられる大津市公園緑地協会は「財源不足で手が回らなかった」と弁明するが、公園遊具の安全管理に対して厳しい視線が注がれる中、批判の声が高まりそうだ。(高山周治)
指定管理者の公園緑地協会「設置者の市の責任で」
大津市「協会が指定管理料で実施を」
同協会によると、一斉点検は、市内157公園の遊具656基を対象に、2008年12月から翌年3月まで実施された。
点検は、遊具メーカーでつくる団体「日本公園施設業協会」の専門家が、国交省の指針に従い協会で定めた安全基準に照らして、手足や指を挟んだり、あるいは落下して首をひっかける箇所はないかなど調べ、ハザードレベル0~3の4段階で総合判定した。
その結果、「生命に危険、あるいは重度の恒久的な障害をもたらしうる」として要改善とされ、最も厳しい「ハザードレベル3」が、遊具全体の2割にあたる83公園156基にのぼった。この結果は市へ報告された。しかし国交省の指針に使用禁止は定めず、判断は各自治体に任せられている。このためか、修繕されず、使用も続けられている。
これについて大津市公園緑地協会は「決まった額の指定管理料から多額の修繕費用をねん出するのは難しい」と釈明する。
同協会は現在3期目(2014年度~18年度)の指定管理を市から受けており、今年度の指定管理料約5億4800万円のうち、公園管理費は約2億900万円。同費用の内訳は樹木せん定や除草、清掃などが約2億円を占め、残り約900万円をベンチやトイレ、遊具の劣化箇所の修繕に充てている。
このような状況から、多額の費用がかかる遊具の安全基準を満たすための修繕について「都市公園の設置者である大津市の責任で実施してほしい」と、要望してきた。
これに対して大津市公園緑地課は「指定管理料には安全基準をクリアーする修繕費も含まれており、これまで更新してほしいと伝えてきた」と対立し、主張は平行線をたどっている。
今回の両者の対応について安全基準を定める日本公園施設業協会は「ハザード3は本来、使用禁止にするレベル。管理者は放置しないで、適切なタイミングで修繕、更新してほしい」と指摘している。
また、都市公園の安全管理強化の指針を出す国交省公園緑地・景観課は「公園管理の責務として適切に安全管理すべき。財政的に厳しいのであれば、国の支援メニューを活用してほしい」としている。