大津市自治連合会の会長(当時)が昨年5月、財務や総会資料の開示を求めた市民に対して、市庁舎内の会議室に呼び出した上、「氏名と住所を言え」などと激高し、関係資料を渡すことを拒否していたことが、市民の証言で明らかになった。自治連を所管する大津市自治協働課は、こうした事実を把握しながら、会長の不適切な言動を不問にしている。この市民は「自治会の活動をしているので、上部団体の財務状況を確かめようと思っただけだ。まさか恫喝されるとは思わなかった。部屋の中で自分1人だけで、本当に怖かった」と話している。

問題となっているのは、自治連合会長を務めていた安孫子平次氏の対応。この女性が「財務関係の資料を見せてもらいたい」と求めたところ、昨年5月2日、市庁舎新館3階にある232会議室へ案内された。

この女性によると、長机2台が向かい合わせに配置され、安孫子氏と隣り合わせで、事務局長(当時)の岩波氏が同席。女性は安孫子氏の向かいの机に座らせられた。その脇では、自治連が2013年から雇用した事務員が同席し、「音声記録を録らせてください」と通告した。室内はまるでテレビドラマに登場する警察の取調べ室のような雰囲気で、圧倒されたという。

安孫子氏は始めこそ、姿勢を正して話を聞き、ていねいに話をしていた。ところが、女性が「資料を下さい」と繰り返し求めたことに立腹し始め、途中から高圧的な物腰に豹変。椅子にふんぞり返るようになった。女性が資料の開示をあらためて求めたところ、安孫子氏は「総会(自治連合会長だけの限定総会)で役員に了承されてからでないと見せられない。総会で、あなたの氏名と住所を言い、こういう要求があったと、みんなに言う」などと、何度も怒鳴りつけた。

会議室を後にした女性は直ちに、市庁舎1階にある自治協働課へ駆け込み、安孫子氏の言動について報告したが、職員は安孫子氏と談笑しているだけで、まともに取り合わなかったという。会議室内でどのようなやりとりをしたのか、職員が安孫子氏に確認を求めることもなかった。

女性が求めた資料は結局、開示されることはなかった。

当日の様子を振り返り、女性は「自治連の会長が市庁舎内で偉そうにしていた。さぞ立派な方なんでしょう。市の職員は会長のご機嫌を取ろうとしているようにも見えた。とにかく驚いた。でも、市役所内ではこうした状態は日常的なのかもしれない」と話している。

安孫子平次氏は70歳代。2009年から2011年まで大津市自治連合会の副会長で、2012年、2013年に大津市自治連合会長に就任。2014年5月の総会後に会長職を退いた。2014年には、全国自治連合会と滋賀県自治連合会の記念式典で、自治連合会長を長年務めたとして表彰されている。
2014年には、大津市特別職報酬等審議会の委員にも就任し、市長給料と議員報酬、議員の政務活動調査費を審議する立場にあった。公金を審議する厳しい倫理観が求められる役を担う中、一方で、所属する自治連合会の財務に対しては自ら顧みることなかったと言える。

 *大津市役所の市庁舎新館の図面。安孫子氏が使ったのは3階232会議室(当日、市に使用申請書を提出していない)

新館3階