かつて大津市と自治会の問題に対して「おかしい」と声をあげた人がいた。大津市比叡平の加藤英子さんだ。1999年にさかのぼる。市に対して情報公開請求をかけ、市と自治連の公金に対する歪んだ関係を鋭く追及した。

当時の朝日新聞(2002年2月23日付)は次のように報じている。

「無駄だ」。国家公務員だった夫の敏夫さんは2年間活動をやめるように説得し続けた。個人の声には動かない行政の体質を知り尽くしていたからだ。しかし、長年人事課勤務で人を見る目を培っていたはずの敏夫さんも、途中で投げ出さない妻の一本気な性格を見抜けなかった。英子さんは『地域の自立が問われる時代。自治会も行政から自立することが必要です。自治会の再建に向けてとことんやります』と言う。

その言葉通り、「報償金」「懇談会」「迷惑料」など、次々と大津市に訴訟を提起した。メディアも積極的に報じた。記者が高い問題意識を持っていたことがわかる。

2003年3月29日付の朝日新聞は以下のように伝えている。加藤さんがおかしいと気づいたきっかけは、地元自治会の決算書の収支だった。

加藤さんが裁判に関わるようになったのは、1999年。持ち回りで自治会の役員に選ばれ、出席した会合で、会計の収支金額が合わないことに気づいたことに始まる。幹部役員に説明を求めたが、明確な回答はなし。3ヶ月後、突然、役員をクビになった。「なぜ」。この時の疑問が、それまで無関心だった行政へ目をむけさせた。大津市に情報公開を請求し、自治会や自治会長に対する報償金の存在も知った。自治会の会計には計上されず、その使い道も不透明だった。根拠もあいまいな公金支出。市と自治会との「いびつな関係」に疑念がふくらんだ。

さらに、同日付の朝日新聞に「世間の常識では間違っていても、役所や議会では『当然』とまかり通っていることがある。それを正したい一心でした」と加藤さんがコメントを寄せている。

加藤さんが、最初に提起したのは、大津市から自治会への報償金支出について。2000年7月に住民監査請求を起した。2000年7月29日付の朝日新聞が報じている。

市民がつくる「比叡平を明るくする会」が、報償金は根拠となる条例や使途の報告義務がなく、支出行為として不適切だとして、市長に8400万円の返還することを求め、市監査委員に請求書を出した。これに対し、市は使途は自治会会計で明らかにされているもので報告を求める必要はない。報償金の一部は謝礼で、法令がなくても支出できると主張した。

当時、報道各社は一斉に「大津市と自治会」の問題を取り上げた。

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