大津市の補助金問題は10年以上前にも大きな社会問題となっていた。その1つが地区環境整備事業費、いわゆる迷惑料の補助金問題だ。しが自治会オンブズパーソン(当時)の加藤英子さんらは2002年、迷惑料として大津市が周辺自治会や住民団体に支出している補助金をめぐり、次々と提訴した。当時の新聞報道を時系列で追ってみた。
■2002年5月 迷惑料返納
し尿処理施設周辺の住民団体に大津市が支出している地区環境整備事業費(迷惑料)の一部約390万円の返還を求める住民監査請求を受け、 市が団体側に迷惑料の返納を求め、全額を受け取っていたことが29日わかった。団体側の交付申請書類に誤りがあったといい、市は審査体制のずさんさを認め ているが、監査を請求した住民には説明していなかった。(朝日新聞5月20日)
■2002年6月 住民監査請求棄却
大津市が田上地区の農業組合所有の倉庫解体に補助金を出したのは違法な公金支出として、しが自治会オンブズパーソン(代表・加藤英子さんら10人)が山田豊三郎市長に約390万円を返還しるよう求めていた住民監査請求で、市監査委員は17日、請求を棄却した。監査委員によると、解体工事の見積書に記載誤りがあったことが判明し、補助金を受けた田上振興対策協議会がすでに全額の約390万円を市に返還しており、監査請求の理由がない、などととした。(読売新聞 6月8日)
■2002年10月 迷惑料めぐり不適切な行為
大津市が、し尿処理施設周辺の住民団体「田上振興対策協議会」に交付した地区環境整備事業補助金(迷惑料)を巡り、市監査委員は4日、不 適切な行為を認めたが、「違法、不法な支出はなかった」と2件を棄却、1件を却下した。市は「疑惑からの信頼回復に全力をあげる」としたが、住民側は「い つまでも市の姿勢は正されない」と批判し、一部の請求について住民訴訟を起こす考えを明らかにした。(朝日新聞10月5日)
■2002年11月 「迷惑料は違法」と地裁に提訴
大津市が、し尿処理施設の住民団体「田上振興対策協議会」に交付した地区環境整備事業補助金(迷惑料)は、虚偽に申請による違法な支出で、寺の敷地の掘築 造にも使われたのは宗教組織への公金支出を禁じた憲法違反だとして、しが自治会オンブズパーソンの会員が1日、大津市を相手に、山田豊三郎市長らに総額約 593万円の損害賠償請求をするよう求める3件の訴えを大津地裁に起こした。加藤さんは「税金が平等に正しく使われておらず、公金支出の不透明さは司法の 場で事実を証明するしかない。長年の慣行を改めない市の責任は重い」と話している。(朝日新聞11月2日)
■2002年11月 「迷惑料は不当な公金支出」と住民監査請求
ごみ焼却施設や廃棄物最終処分場などの周辺にある自治会など計6団体に、大津市が補助金として交付している地区環境整備事業費(迷惑 料)は不当な公金支出だとして、大津市の加藤英子さんら市民10人が28日、01年、02年両年度に交付された計4440万円を自治会などから返還させる よう求める住民監査請求を出した。
市によると、地区環境整備事業費の交付申請手続きは毎年4月ごろ、自治会などが提出する収支予算書に基づいて行われる。しかし、年度末 に自治会などが市に提出する同事業の実績報告書には、収支決算書しか添付されず、領収書などの個別書類は自治会側で保管することになっている。このため、加藤さんらは、領収書などの提出を受けないまま補助金を支出するのは不適切だと指摘。「予算執行が厳正に行われているかどうか疑問」と主張している。
これに対し、市環境企画課は「領収書などの関係書類は職員が自治会へ出向いて、直接確認しており、現状で十分だと考えている」と話している。(朝日新聞11月29日)
■2002年11月 大津市が職員16人を処分、うち14人が補助金絡み
大津市が先月末、16人の職員を懲戒などの処分にした。このうち市民団体が追及し続けているし尿処理施設周辺の住民団体などへの不透明な補助金支出に絡んでは14人の職員が対象になった。
大津市では5月にも、生活扶助費に貸し付けを巡る公金流用事件があり、複数の職員が処分された。波紋を広げた市長の「ただ酒とただの女」発言(後に撤回)もあった。一つの自治体で起きる不祥事を、短期間で相次いで取材した経験は初めてだった。
今回のような大量処分は、同市にとっても初めてで、市側は「市民に疑念を抱かせたことのけじめをつけた」と説明した。しかし、問題は、 いまだに不透明な補助金支出を続けている市長らの姿勢ではないか。「自らのけじめ」をつけないまま、職員の処分だけで済ませるつもりだろうか。(杉山)(朝日新聞11月30日)