地域コミュニティの調査報道

「自治会問題」メディアによる報道/朝日新聞


 不透明な公金を追及/山田元市長を相手に/市民とメディアが共闘/自治会№18

約15年前、情報公開請求した資料を基に、住民監査請求を大津市に提起した加藤英子さんは、長く続いていた大津市と自治会の「不透明なおカネの実 態」を明らかにした。監査委員による監査請求棄却を受け、裁判に移行した。自治会の「名誉棄損」、「報償金」、「迷惑料」、「懇談会」と、数々の裁判過程 で、大津市が抱えている問題を浮き彫りにした。29年にわたり、大津市市長だった山田豊三郎市長(当時)を相手に、1人で立ち上がり、仲間を募り、法廷で 闘った。当時、各報道機関の記者たちは、加藤さんの信念に触発されたかのように、大津市の不透明なおカネの使途を追及した。

当時、大津市を取材していた朝日新聞の下地毅記者は、記者コラムで加藤英子さんら「しが自治会オンブズパーソン」の取り組みをこう評した。

 会うたびに、記者を名乗る自分が恥ずかしくなる人がいる。例えば、大津市の自治会報償金や、し尿処理施設の迷惑料問題を追及するオンブズパーソンの会員だ。
 彼らは、無機質な数値が並ぶ行政の書類を読み込み、「これは何の支出だろう」と疑問を抱いた項目の資料を情報公開条例に基づいて取り寄 せている。現地調査もし、複数の資料をつき合わせ、納得するまで何カ月も調べ続ける。調査の結果、判明した不透明な公金が数万円程度のこともある。「大し たことではない」と冷笑する声を聞くこともあるが、決してそうではない。
 本来、こうした作業は記者の仕事ではないか。私の書く記事など、オンブズパーソンが無償で調べた上澄みをかすめ取っているだけだと思いつつ、自分の足で調べて記事を書く大切さを痛感している。(下地)(朝日新聞2002年8月8日)

当時の報道によると、加藤英子さんは、山田市長(当時)に対しても、臆することなく辛口のコメントで批判し続けた。

 懇談会で1人1万円の公金支出はいいのか―。大津市と自治会幹部の懇談会に税金を使うのは違法と、市民団体「しが自治会オンブズ パーソン」の10人が5日、山田豊三郎市長らを相手に食糧費約283万円を返すように求め、大津地裁に提訴した。控訴中の自治会報償金訴訟に続き、行政と 自治会の関係を問う裁判は第2ラウンドに入った。
 提訴後、大津地裁で会見した自治会オンブズの加藤英子代表は「人の金、税金でお酒を飲むのはあまりにおかしい」と批判。市職員が業務上 横領の疑いで逮捕された事件を受け、山田市長が職員に「ただ酒とただの女には注意しろ」と訓示(後に発言を撤回)したことを引き合いに「山田市長もただ酒 には気をつけて欲しい」と話した。(朝日新聞2002年6月6日)

【用語解説】
ー住民監査請求ー
住民が、自らの居住する地方公共団体の違法若しくは不当な財務会計上の行為があると認められる場合、その地方公共団体の監査委員に対し監査を求め、その行為に対し必要な措置を講ずべきことを請求することができる制度である。

参照「ウィキペデイア:住民監査請求」

-迷惑料(大津市地区環境整備事業補助金)-
大津市が設置する一般廃棄物処理施設について、周辺地域の団体と覚書を締結し、周辺地域の生活環境の向上に資する事業に対し、対象事業費を補助するとして、該当の自治会4~5学区に毎年多額の補助金を支出している。

参照「大津市地区環境整備事業補助金交付基準」
不明点・・昔から迷惑料補助金は支出されていたが、交付基準の開始時期は空白のまま。

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 迷惑料の補助金支出で提訴/「違法な支出」と市民団体/2002年 自治会№17

大津市の補助金問題は10年以上前にも大きな社会問題となっていた。その1つが地区環境整備事業費、いわゆる迷惑料の補助金問題だ。しが自治会オンブズパーソンの加藤英子さんらは2002年、迷惑料として大津市が周辺自治会や住民団体に支出している補助金をめぐり、次々と提訴した。当時の新聞報道を時系列で追ってみた。

■2002年5月 迷惑料返納
し 尿処理施設周辺の住民団体に大津市が支出している地区環境整備事業費(迷惑料)の一部約390万円の返還を求める住民監査請求を受け、市が団体側に迷惑料 の返納を求め、全額を受け取っていたことが29日わかった。団体側の交付申請書類に誤りがあったといい、市は審査体制のずさんさを認めているが、監査を請 求した住民には説明していなかった。(朝日新聞5月20日)

■2002年6月 住民監査請求棄却
大津市が田上地区の農業組合所有の倉庫解体に補助金を出したのは違法な公金支出として、しが自治会オンブズパーソン(代表・加藤英子さんら10人)が山田豊三郎市長に約390万円を返還しるよう求めていた住民監査請求で、市監査委員は17日、請求を棄却した。監査委員によると、解体工事の見積書に記載誤りがあったことが判明し、補助金を受けた田上振興対策協議会がすでに全額の約390万円を市に返還しており、監査請求の理由がない、などととした。読売新聞 6月8日)

■2002年10月 迷惑料めぐり不適切な行為
大 津市が、し尿処理施設周辺の住民団体「田上振興対策協議会」に交付した地区環境整備事業補助金(迷惑料)を巡り、市監査委員は4日、不適切な行為を認めた が、「違法、不法な支出はなかった」と2件を棄却、1件を却下した。市は「疑惑からの信頼回復に全力をあげる」としたが、住民側は「いつまでも市の姿勢は 正されない」と批判し、一部の請求について住民訴訟を起こす考えを明らかにした。(朝日新聞10月5日)

■2002年11月 「迷惑料は違法」と地裁に提訴 
大津市が、し尿処理施設の住民団体「田上振興対策協議会」に交付した地区環境整備事業補助金(迷惑料)は、虚偽に申請による違法な支出で、寺の敷地の掘築 造にも使われたのは宗教組織への公金支出を禁じた憲法違反だとして、しが自治会オンブズパーソンの会員が1日、大津市を相手に、山田豊三郎市長らに総額約 593万円の損害賠償請求をするよう求める3件の訴えを大津地裁に起こした。加藤さんは「税金が平等に正しく使われておらず、公金支出の不透明さは司法の 場で事実を証明するしかない。長年の慣行を改めない市の責任は重い」と話している。
(朝日新聞11月2日)

■2002年11月 「迷惑料は不当な公金支出」と住民監査請求
  ごみ焼却施設や廃棄物最終処分場などの周辺にある自治会など計6団体に、大津市が補助金として交付している地区環境整備事業費(迷惑料)は不当な公金支出 だとして、大津市の加藤英子さんら市民10人が28日、01年、02年両年度に交付された計4440万円を自治会などから返還させるよう求める住民監査請 求を出した。
 市によると、地区環境整備事業費の交付申請手続きは毎年4月ごろ、自治会などが提出する収支 予算書に基づいて行われる。しかし、年度末に自治会などが市に提出する同事業の実績報告書には、収支決算書しか添付されず、領収書などの個別書類は自治会 側で保管することになっている。このため、加藤さんらは、領収書などの提出を受けないまま補助金を支出するのは不適切だと指摘。「予算執行が厳正に行われているかどうか疑問」と主張している。
 これに対し、市環境企画課は「領収書などの関係書類は職員が自治会へ出向いて、直接確認しており、現状で十分だと考えている」と話している。(朝日新聞11月29日)

■2002年11月 大津市が職員16人を処分、うち14人が補助金絡み
 大津市が先月末、16人の職員を懲戒などの処分にした。このうち市民団体が追及し続けているし尿処理施設周辺の住民団体などへの不透明な補助金支出に絡んでは14人の職員が対象になった。
 大津市では5月にも、生活扶助費に貸し付けを巡る公金流用事件があり、複数の職員が処分された。波紋を広げた市長の「ただ酒とただの女」発言(後に撤回)もあった。一つの自治体で起きる不祥事を、短期間で相次いで取材した経験は初めてだった。
  今回のような大量処分は、同市にとっても初めてで、市側は「市民に疑念を抱かせたことのけじめをつけた」と説明した。しかし、問題は、いまだに不透明な補 助金支出を続けている市長らの姿勢ではないか。「自らのけじめ」をつけないまま、職員の処分だけで済ませるつもりだろうか。(杉山)(朝日新聞11月30日)

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「市政に君臨する自治連合会」/メディアが一斉に報道/自治会№15

大津市と大津市自治連合会の問題は、約15年前、マスメディアが大きく取り上げた時期があった。2000年に大津市の市民が報償金問題について問題提起し たのをきっかけに、各メディアが一斉に報道した。当時の報道資料を調べてみると、地元紙では滋賀報知新聞の石川政実記者、全国紙では朝日新聞の下地毅記者 と毎日新聞の日野行介記者らがそれぞれ、深く切り込んでいた。当時、「市政に君臨する自治連合会」「問われる支出の根拠」「改善策を考える時期」など、メ ディアが大津市に突き付けた問題は、15年経っても変わらず、抜本的見直しの兆しさえ見えない。

朝日新聞の下地毅記者は、「自治会決算」の問題を突き、近代化を提起していた。2000年9月6日の記事は、次のように伝えている。

  住民側の不信を深める原因の一つに、自治会決算の分かりにくさがある。例えば、自治会長報償金の一部あるいは全額を、自治会に『寄付』しても決算に載せな いこともあり、市の支出と額があわないケースがある。決算のあり方は会則で決めているが、細則を定めている自治会はほとんどなく、会則さえない自治会もあ る。市は『すべて自治会会計で明らかになっているため、報告義務はない』としているが、公金である以上、会計決算の『近代化』も問われそうだ。

さらに、次のような折田弁護士のコメントを記事の中で引用している。

 「法的な根拠がなければ違法な公金支出に当たる可能性がある。会計処理は自治の原則で自治体制は何も言えず、法的ルールのない世界になっており、同種の問題が全国で起きている」

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