大津市は、入札に有利になる「協力証明書」を任意団体「琵琶湖を美しくする運動実践本部」が、ごみの運搬作業などに携わった民間業者に対して発行することを認めている。この制度が受け入れられるとすれば、この任意団体が適正かつ公正な手続きをしている場合に限られる。確かに、実践本部は琵琶湖市民清掃に参加した民間業者だけに「協力証明書」を発行しており、その点からは適正かつ公正な手続きが行われているように見える。しかし、本当にそうだろうか?

琵琶湖市民清掃の当日、大津市はパッカー車などの清掃車をなぜか提供していない。ごみを運搬しているのは特別な許可を得ていない業者であるが、大津市は容認している。なぜこうした事態が許されるのか、大津市は市民に対して説明する義務がある。ところが、説明責任を果たしていない。理由は依然として不明である。

ところで、こうした無許可だがごみを運ぶ民間業者は、誰が選んでいるのだろうか。民間業者に謝礼を支払っているのは、形式上は実践本部である。活動の原資は大津市からの補助金だ。実践本部は実態としては、これまた任意団体である大津市自治連合会が運営している。つまり、琵琶湖市民清掃は大津市自治連合会が取り仕切っていると言ってよい。民間業者の選定は、大津市自治連合会の傘下にある、36の学区の自治連合会が担っている。各学区の自治連合会と結びつきの強い業者だけが選ばれている。

選ばれた民間業者は、謝礼を受け取っていながら、琵琶湖市民清掃に「協力」した、ボランティア精神にあふれた、実にありがたい存在、という扱いを受ける。多数の市民が参加する清掃事業に「協力」したのだから、大津市の入札に有利になる「協力証明書」を発行するという仕組みだと、表向きは説明されている。

しかし、実態はどうだろうか。学区の自治連合会が、幹部の身内や知り合いの業者を選び、実践本部つまり大津市自治連合会が謝礼(原資は大津市の補助金)を支払い、申請があれば「協力証明書」を発行している。つまり、入札に有利になる「協力証明書」の発行は自治連合会の手にゆだねられている。この「利権」は自治連合会の手にある。

この状態は著しく不公正だ。なぜなら、入札制度は極めて公的なものであり、厳格な公平性、公正性、透明性が求められるからだ。自治連合会の活動は公的なものではない。したがって、どういう業者を選ぼうが自由と言えば自由である。ところが、このような入札制度に、特定の任意団体が介在し、意のままに民間業者を選ぶ権限を持っているのは、極めて不正常な状態だと言える。

いわば、入札制度に求められる、厳格な公平性、公正性、透明性という条件が、入札が行われる前の段階から崩れてしまっている。結果的に大津市は、特定の民間業者を優遇していることになる。多数の市民が参加する琵琶湖市民清掃の裏で、自治連合会が「利権」を持ち続けている。こうした実態を大津市は知りながらも、放置している。大津市にとって大事なのは、厳正な入札制度を維持することよりも、自治連合会へのサービスなのだろう。

「琵琶湖を美しくする運動」とは、よく名付けたものである。ボランティアで駆り出された市民は、自治連合会の「利権」の目眩ましに使われている。ネーミングに騙されてはいけない。