琵琶湖市民清掃をめぐり、大津市が任意団体「琵琶湖を美しくする運動実践本部」に対し補助金を支出する一方、事業を維持するために両者が結託し、廃棄物処理に関する条例や規則を無視していたことが、市民による情報公開請求などから明らかになった。大津市は実践本部のメンバーになっており、両者が一体化して、こうした仕組みを作りあげてきた。目的は、大津市の補助金を使うなど、実践本部の中核である大津市自治連合会の利権を守るため。市民に見えにくい形で、本来税金を投入する必要のない“まやかしの事業”を巧妙に作り、維持してきたと言える。
大津市は実践本部が主催する琵琶湖市民清掃に対し、極めて協力的な姿勢を取っている。年間550万円の補助金を支出しているほか、▽実践本部の事務スペースを、大津市役所で提供▽美化活動としてのごみを扱う申請・承認を免除▽集めたごみの処理費用を免除▽ごみを集める仮置き場を設置▽当日、多数の市職員を仮置き場などへ派遣▽実践本部が学区自治連合会に車両を提供する際、無許可の民間業者を容認▽運搬車両を提供した民間業者に「協力証明書」を発行▽ホームページで市民に参加を呼びかけ、などが挙げられる。補助金以外にも、実際は多額の税金が投入されていることがわかる。こうした特別な行政サービスは、主に実践本部、すなわち大津市自治連合会に向けられている。
大津市は今回、市民からの情報公開請求に対して、「実践本部の参加団体である大津市が、実践本部の一員としてごみ処理の役割を担っている」と文書で回答した。ところが、大津市は市民清掃の当日、ごみを収集・運搬するパッカー車を稼働させていない。また、南部の大田廃棄物最終処分場を開放せず、ごみの計量も行っていない。大津市は「ごみ処理の役割を担っている」としながら、やろうとすればできるサービスを意図的に提供していない。
条例や規則が定めるように実践本部が、美化活動としてのごみ取扱いを申請し、承認を受ければ、美化活動本来の姿が実現する。つまり、大津市は無料で収集、運搬、処理することになる。ごみの運搬や収集には市保有のパッカー車を使えばよい。生ごみではないので、必ずしも当日中に運搬する必要はない。ごみを運搬するために、無許可の民間業者の車両を使う余地はない。ごみは処理場に直接搬入すればよいので、仮置き場を設置する必要もない。
両者は結託して、このような流れを巧妙に回避し、補助金のために“まやかしの事業”を作り上げた構図が浮かび上がる。大津市は実践本部に補助金を支出し、事業を任せた方が、市がすべて行うよりも経済的である(経費を抑えられる)、と大手メディアに説明したことがある。しかし、それを裏付ける実証的なデータは存在しない。