大津市は今年から琵琶湖市民清掃の実施形態を大幅に変更することを決めたが、不合理な説明に終始している。大津市は本誌の取材に対し、変更の理由として運搬車両の問題などを挙げている。しかし、以前から指摘されていたことや、事実誤認ばかりである。大津市は市民に対して、本当の理由を誠実に示さなければならない。

環境政策課の課長が理由としたのは、「運搬車両の確保が難しくなってきたこと」、「自治会の役員が自ら収集・運搬するのはリスクがあること」、「収集の際、地域で上手く分別ができなくなるので処分するのが大変になること」など。これらの問題が、実施主体となっている任意団体「琵琶湖を美しくする運動実践本部」の役員会で取り上げられ、その場で変更が決定されたと説明している。

しかし、一番目の、ごみを運搬する車両を確保しづらい状況は、何も新たな問題ではない。「琵琶湖を美しくする運動実践本部」の総会資料にも、ここ数年毎年記載されている。「実践本部」は以前から、「運搬車両を集めるための対策」と銘打って、協力業者へ、大津市の総合評価方式入札で加点される「協力証明書」を発行していた。この問題は、本誌でも取り上げた。

では、実際問題として、運搬車両の確保が難しいのだろうか? これはかなり疑わしい。というのも、「実践本部」は各学区自治連から申し出のあった運搬車両に対し、大量の整理券を発行しているからだ。一斉清掃当日、大田最終処分場のそばに設けられた仮置き場には、次から次へと、ごみを積んだトラックが入ってくる。

また、二番目の理由は事実に反する。自治会の役員がごみを運搬しているわけではない。その代わりに、学区自治連が依頼した業者が運んでいる。無許可業者にまで謝礼金を支払って収集・運搬を依頼していた。大津市は、ごみの収集・運搬において、これまでも何らかのリスクがあったと認識しているのだろうか。廃棄物処理法では、適切なごみの収集・運搬をするためにも、許可業者にしか収集、運搬を認めていない。例外として認めているのは、事業者自らが、ボランティアで収集・運搬することだ。自治会の役員が自ら収集・運搬するしかないが、リスクがあるというのなら、市に依頼するか、許可業者に依頼しなければならない。依頼された許可業者は、一般廃棄物のマニュフェストを大津市へ提出して、適切な処分のため手続きをする。

さらに、三番目の理由も事実に反する。各地域で分別しているわけではない。大津市南部の場合、ごみは各学区自治連の車両が、大田最終処分場の脇に設けられた仮置き場へ運び込み、そこで分別される。昨年7月には、越直美市長も作業服姿で、分別の現場に立ち会っている。

その一方、大津市は昨年まで、市のパッカ―車を、当日稼働させることを頑なに拒んできた。なぜ大津市は昨年まで、パッカー車を1台も出さなかったのか。稼働させるつもりなら、いつでも稼働させることができたのではないか。わざわざ学区自治連が業者に「協力証明書」を発行してまで、車両を確保する必要はなかったのではないか。逆に、意図的にパッカー車を稼働させず、学区自治連が業者に車両提供を頼むという条件作りに加担していたのではないか。大津市はこれらの疑問に答える必要がある。理由もなく「今年から正常化します」では、過去の不適切な事業運営の隠蔽としか映らない。

既報の記事:「運搬車両の確保が困難」と実践本部/大津市はパッカー車を提供せず/市民清掃№53