大津市が進めている市民センター統廃合の問題で、市の構想では、新たな組織「まちづくり協議会」(仮称)を発足させ、5年後には施設の運営を全て委託することが柱になっている。一見、「住民主体」の運営が実現するかのように見える。しかし、これまでの経緯からすると、市からの補助金を食い物にしてきた大津市自治連合会が、組織の運営までを意のままに牛耳る恐れがある。
越直美市長が押し進める市民センターの統廃合の狙いはどこにあるのか。1つは、経費削減の“実績”作りとイメージ向上のため。もう1つは、評判の悪い「大津市自治連合会」という名称を表向きは使わず、「まちづくり協議会」という別の名で、さらなる権限を行使しようとする大津市自治連合会の幹部のためだ。
統廃合後の施設名は「コミュニティセンター」(仮称)。いかにも地域住民が利用しやすい場所を想像させる。しかし、このコミュニティセンターを運営する人物をどう選出されるのかは、明らかにされていない。さらに、問題なのは、この受託者が、地方公務員法で規定された公務員ではない点だ。資格や研修を積んだコミュニティソーシャルワーカーなどの専門職でもなく、自治連合会が看板だけ掛け替えた「まちづくり協議会」が、意のままに選ぶ人物が担うことになる。
施設管理や運営では、地域住民のさまざまな要望を聞きながら、公平に施設を利用させなければならない。しかし、「まちづくり協議会」役員による私物化の恐れもある。というのも、大津市自治連合会はこれまで大津市からの補助金を、でたらめな使い方をしてきた“実績”があるからだ。
例えば、琵琶湖市民清掃の補助金問題では、晴嵐学区自治連合会や、滋賀学区自治連合会が、市民清掃の補助金を使い、ビールや弁当などを購入し、市民センターへ納品させていた。一部の学区では、支所長(大津市の職員)がいた時でも、傍若無人な私物化が顕著だった。市民センターの統廃合後、貸館業務の権限をこれらの団体が中心の組織に担うことになれば、かつての私物化がピタリと止むとは想定しにくい。
越市長の行政改革とは、自身のイメージ向上のためだけのものだ。地域住民のまちづくりの真の課題は何かという視点が欠落していると言わざるえない。