大津市と大津市自治連合会の問題は、約15年前、マスメディアが大きく取り上げた時期があった。2000年に大津市の市民が報償金問題について問題提起したのをきっかけに、各メディアが一斉に報道した。当時の報道資料を調べてみると、地元紙では滋賀報知新聞の石川政実記者、全国紙では朝日新聞の下地毅記者と毎日新聞の日野行介記者らがそれぞれ、深く切り込んでいた。当時、「市政に君臨する自治連合会」「問われる支出の根拠」「改善策を考える時期」など、メディアが大津市に突き付けた問題は、15年経っても変わらず、抜本的見直しの兆しさえ見えない。

 まず、滋賀報知新聞の石川政実記者は、「市自治連合会」という第三の議会の「源泉」を検証している。2001年3月8日の記事では次のように伝えている。

 学区自治連合会長は自治会長の中から選ばれるのが普通だが大津市の場合そうではない。ベテラン役員の互選などで選出されている。12年度の学区自治連合会長の任期(12年度まで連続で)の単独平均は『5.7年』。田上学区の廣瀬修氏が28年連続、上田上学区の山本俊一氏が24年連続で明らかなように、学区自治連合会メンバーの流動性は極めて低く、権力が集中する構造になっている。

当時、大津市民の加藤英子さんが「自治会に対する報償金は違法だ」として、大津市を相手取って訴訟を起こした。毎日新聞の日野記者は、原告側と市と自治連側の主張を取り上げ、「自治会の在り方」を追及していた。2001年2月22日の記事はこう報じている。

 市自治連合会に支出された報償金から、研修という名の視察旅行に使われている。宿泊施設は温泉旅館で、行き先は観光地。市自治協働課の職員が職務として公費で随行していることに対して、原告の加藤英子さんは、研修という名ばかりの温泉旅行と怒りをあらわにしている。
一方、市自治連合会の山本俊一会長は「内容は研修視察。観光に見えるかもしれないが、自治の先進地域に関する勉強は必要」と反論する。市の住民自治課も「自治連合会に支出した報償金から研修視察の旅費が出ているかどうかは分からないが、そうであっても問題ない。研修を通じて自治会活動に関する見聞を広めることは必要」という。

原告側の折田泰弘弁護士と住民は、市の報償金支出についての説明に対して、異論を唱えていた。折田弁護士のコメントを引用しつつ、日野記者は次のように報じている。

 「条例に基づかない支出とは、逆に歯止めがないということ。内閣官房機密費のようなものだ。自治会のさらに上部組織に報償金を支払うのは二重払いでおかしい」と反論。一次提訴後に会見した住民の1人は「自治会員を辞めたら広報誌が配布されなくなった。義務であるべき公共サービスが、自治会非加入を理由に差が出るのはおかしい」と訴える。

また、日野記者は自治会の定義を引用しながら、市が言う「任意団体」の説明にも疑問を投げかけていた。

 同一地域内で一定数の世帯が新たな自治会を作った場合、任意団体である以上、市としては認めるほかないと思うが、市住民自治課は「あくまでも地縁に基づく団体。任意団体であっても同一地域内で二つの異なる自治会は認められない」と話す。

朝日新聞の下地毅記者は、「自治会決算」の問題を突き、近代化を提起していた。2000年9月6日の記事は、次のように伝えている。

 住民側の不信を深める原因の一つに、自治会決算の分かりにくさがある。例えば、自治会長報償金の一部あるいは全額を、自治会に『寄付』しても決算に載せないこともあり、市の支出と額があわないケースがある。決算のあり方は会則で決めているが、細則を定めている自治会はほとんどなく、会則さえない自治会もある。市は『すべて自治会会計で明らかになっているため、報告義務はない』としているが、公金である以上、会計決算の『近代化』も問われそうだ。

さらに、次のような折田弁護士のコメントを記事の中で引用している。

 「法的な根拠がなければ違法な公金支出に当たる可能性がある。会計処理は自治の原則で自治体制は何も言えず、法的ルールのない世界になっており、同種の問題が全国で起きている」

参考記事「滋賀報知新聞/2001年3月8日」

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