【論説】自治連と大津市の“主従関係”

任意団体である大津市自治連合会(自治連)が行う1泊2日の研修旅行に、忙しいはずの大津市職員が2人も同行している。ここから見えてくるのは、両者の「馴れ合い」というよりも、自治連が「主」、大津市が「従」という“主従関係”だ。

自治連が大津市長に対して出した依頼文書を見てみよう。「お願い」の形は取っているが、内容は上位下達に等しい。まず、同行してほしい職員2人を指名。その上、参加費1万5千円が必要なので払ってほしいとしている。さらに、大津市の条例・規則が定める通りに宿泊費も支出せよ、と指示しているのである。

つまり、1つの任意団体が、地方行政府に対して、「自分たちが開く研修旅行に参加せよ。ただし経費は一切持ちませんよ」と求めているのである。こういう物言いは、日頃から“主従関係”が維持されているからこそ、自然に出てくるのだろう。

非常識なお願い文書に応じる、大津市の方にも問題がある。そもそも任意団体の研修旅行に職員が付いていく必要があるのか。職員2人の参加費、宿泊費、それに2日分の人件費を負担するというのなら、自治連の研究旅行への参加が、業務上欠くことができない公務だと位置づけられねばならない。

職員が研修旅行に付いていく目的は何なのだろうか。自治連との関係で、しばしば説明に使われる「意見交換」「情報収集」なのだろうか。琵琶湖ホテルで毎年1回、宴会を一緒に開き、さらに研修旅行にまで付き合う必然性はどこにもないはずだ。2人が1泊2日でつきあえるほど、日頃の仕事に余裕があるのだろうか。

「自治連からの要求は断れない」という空気が市役所内に広がっているのを肌で感じる。研修旅行への参加も「毎年のことだから今年も職員を出しておこう」という安易な判断に傾いたのではないか。

公務の出張だと言うのならば、報告書を書くのが公務員としての最低限の務めだろう。しかし、同行した2人の職員は出張報告さえ書き残していない。これでは市民に説明のしようがない。必要のない仕事だったから報告書も書けない、というのが実態ではないか。

2人の職員が嫌々参加させられたのか、それとも、喜々として参加したのかは定かでない。研修旅行中の宴会で、自治連の幹部にお酌をしたのか、それとも、させられたのか。いずれにしても、公務員として情けない。

大津市が取るべき対応は実に単純である。「研修旅行は自治連のみなさんでどうぞ。大津市の職員は参加しません」と返答すればよいだけである。

大津市は自治連との“主従関係”をいつまで続けるつもりだろうか。大津市が仕えるべきなのは自治連ではなく、市民のはずだ。