大津市と大津市自治連合会(自治連)との間で行われる、公金を使った飲食は、他の自治体と比較にならないほど多い。年に何度も繰り返される。それも必ずアルコール類を伴う高級ホテルが選ばれる。こうした経費はどこから捻出されているのか、市民にはまったく見えない。両者は「持ちつ持たれつ」の関係で、大津市が経費を負担している場合もあれば、自治連が負担していることもある。自治連は多額の補助金を大津市から毎年受け取っている。いずれにしても、大部分は公金による飲食だと考えられる。しかし、市民は「蚊帳の外」に置かれ、実態が伝わってこない。

自治連の総会が終わった直後に琵琶湖ホテルで開かれる懇親会は、「意見交換」を理由に、市側が支出している。つまり、主催する自治連ではなく、招かれる側の市が1人6000円までを負担している。それ以外の会議や研修でも、琵琶湖ホテル「瑠璃の間」などが使われている。会議などとセットで開かれる会食は、主催する自治連側が負担しているとみられる。しかし、自治連は市から多額の補助金を受け取っていながら、「実績報告書」には領収書を添付していないため、会計が不透明になっている。

例えば、ここ数年は、7月の夏季研修、60周年記念式典、12月の定例会、3月の定例会などを、全て琵琶湖ホテル「瑠璃の間」で開催している。市の職員も公務として同席している。自治連へは、大津市からの毎年、運営補助金として300万円から支出されている。その交付基準は「総会、定例会等会議事務経費、視察研修、各種大会参加等事務経費のため」と規定されている。したがって、これらのホテルでの会議にかかる諸経費も、運営補助金から支払われている可能性が高い。市職員と自治連幹部が参加しているが、市の予算からではなく、自治連という組織から諸経費が支出されているとみられる。

いずれも原資は公金である。それにもかかわらず、所管の市自治協働課は、自治連が主催している場合は、使途について意見を言う立場でないと、説明を逃げている。自分の課から職員がこうした会議に参加していても、説明しようとしない。

時代をさかのぼってみよう。「懇親会の食糧費」を巡る住民訴訟をめぐり、原告側の加藤英子さんは、2003年12月の報道の中で「税金で飲み食いしなければ意思疎通できない懇親会を開くなんておかしい」「個々人が負担し、公金を支出すべきでない」と指摘している。

一方、大津市長(当時)の山田豊三郎氏は「懇談会の目的は地域住民の代表である学区自治連合会長から市政への要望や意見を広く聴き、意見交換をして理解を深めることだ」とし、「社会通念上儀礼の範囲にとどまる範囲」と反論していた。

地域住民から意見を聞く機会は他にないのだろうか。大津市は、市政への要望を「要望書」という書面にして、学区住民から毎年提出させている。要望は、学区自治連合会長を通さなくても、本来は書面で十分に伝わるはずだ。それなのに、市民からの要望を聞くために、わざわざ高級ホテルで懇親会を開き、そこに自治連合会長を招く必要はない。

ところが、実際は「要望書」提出の仕組みが形骸化している。というのも、住民から提出させた「要望書」は、「対応できる予算がない」との理由で、ほとんどがゼロ回答だ。「書いても無駄」という意見は、住民自治を考える人ほどよく口にする。つまり、「要望書」という仕組みは、「住民の声をよく聞いていますよ」というポーズにしか過ぎない。

大津市は、市民に対してことあるごとに、「財政が逼迫している。お金がない」などと強調する。大津市の市庁舎内では、正午になると、各課の電気が一斉に消える。環境配慮と経費節減のために1時間消灯する。うす暗い中で、職員たちがお弁当を広げる光景が見られる。その一方、部長級の市幹部は、自治連の幹部と共に、豪華なホテルで6000円以上の食事をとる。しかも、自腹ではなく、公金を使って酒類まで振る舞われる席に出かけている。

市はこうした懇親会が、「意見交換」のためだと主張する。これらが自分たちの仕事、つまり公務だというのである。しかし、市と自治連の双方とも、「意見交換」として残された記録は一切ない。言い換えれば、「公務」としての記録が残っていない。

自治連の事務代行をしていた自治協働課は、メモさえ残していない。関連の公文書はどこにも存在しない。自治連が雇用した事務員は昨年5月、メモや記録をとるという仕事をしたことがないと話していた。

逆に言えば、記録にも残さない「意見交換」という目的のため、大津市は自治連と慣例の公金飲食を続けている。いまどき、こういう前時代的な自治体は極めて珍しい。いったいいつまで続けるつもりなのだろうか。越直美市長はどう考えているのだろうか。

参考資料1「大津市HP/大津市自治連合会の運営補助金交付基準」

大津市の公金飲食を問題にした過去の報道