大津市自治連合会の総会資料を、総会に公務で参加した市の職員は「焼却した」と説明している。文書主義の役所の中で、多額の補助金を支出している任意団体の資料を、職員がそう簡単に処分してしまうものなのだろうか? 中央か地方かを問わず行政官庁はこれまで、何か不都合なことがあると、職員が文書を「紛失」したり、「廃棄」したりしてきた歴史がある。疑惑は膨らむばかりだ。

一般に公務員が公務で、市役所の外で会議やイベントなどに参加した場合は、出張報告などを作成する。主催者側から配布された資料は、出張報告に添付して提出したり、業務ファイルに綴じて保管したりするのが、公務員としての基本動作になっている。

今回、大津市自治連合会の総会に出席しているのにもかかわらず、大津市役所のどこにも総会資料は保管されていない。情報公開条例に基づいて、文書の開示を求めたところ、「存在しない」との回答が届いたからだ。聞き取り調査によると、自治協働課の職員は「焼却した」、課長は「自宅にある」と答えている。

それでは、大津市自治連合会を所管する自治協働課は、総会資料を必要ないと判断しているのだろうか? 多額の補助金を市が毎年支出している任意団体の活動をどうやって把握するのか? 総会資料には通常、予算・決算などの細かい数字が並ぶ。自治協働課の職員は、琵琶湖ホテルで資料が配付された際に、これらのデータをすべて頭の中に記憶したというのだろうか?

自治協働課が本当に自治連合会を所管している、つまり管理監督しているというのならば、総会資料は必要不可欠な資料である。万が一、過って紛失した、廃棄したという自体が発生したとしたら、自治連合会から取り寄せればよいだけの話である。

文書取扱規程を素直に読めば、自治連合会は「市関連団体」と位置付けられ、総会資料は「重要文書」と受け止めるなら「永年」、そうでなくても「5年」の保存が義務づけられている。何人もの職員が琵琶湖ホテルの総会に参加していながら、誰一人として保管してない。市役所内のどこにもない。事実ならば、集団での文書取扱規程に違反したことになる。

「保管していない」と恥ずかしげもなく主張する。百歩譲って、それを信じることにしよう。もしそうだとすれば、職員の一人として総会資料さえ持ち帰り、十分にチェックしようとしていなかったことなる。こうした状態を、世間では「馴れ合い体質」と呼ぶ。

そうではなく、意図的に「捨てよう」と、組織的な号令がかかっているからではないのか。このような官僚組織の在り方は「隠蔽体質」と呼ばれている。

特定団体との「馴れ合い体質」か、組織的な「隠蔽体質」か。それとも両方なのか。いずれにしても自治協働課は大きな問題を抱えている。

■文書が「紛失」した最近の事例
自らの組織にとって不都合な文書を、行政組織は過去から現在に至るまで、消してしまうという不自然な行動を繰り返してきた。例えば、東京五輪の招致活動では、東京都が「8事業 18 億円」の関係書類を「紛失した」としている。2012年10日20日付の朝日新聞の報道によると、消えた大量の文書は、いずれも保存が義務づけられている期間中だった。朝日新聞の取材に対し、東京都スポーツ振興局は「書類はまとめて都庁内の棚に保管しているが、紛失した。外部に持ち出し たことはなく、なぜ無くなったか分からない」と話す。高額支出に集中していることについては「分からない」 としている。