大津市自治協働課が今年3月に、大津市自治連合会「60周年記念誌」の一部を黒塗りして公開にしたのは、集合写真だけでなく、教育部長、市民部長、自治連合会長の挨拶文の顔写真なども含まれていた。補助金と自治会費を原資として制作した記念誌の一部を、なぜ「黒塗り」にしなければならないのか。

「黒塗り」にしたのは、その部分を市民に公開すると不都合がある、と大津市が判断したからだ。大津市自治協働課によると、その自治連合会の幹部の顔写真は「個人情報」であり、市民には見せられないのだという。しかし、大津市はこれまで公共性が高いという理由で、任意団体である大津市自治連合会を特別扱いしている。例えば、自治連合会の事務局に対して、市役所内のスペースを無償提供している。公共性が高いというのであれば、幹部の姿形は「個人情報」ではなく、公的なものと判断すべきだろう。

大津市の教育部長や市民部長についても顔写真を「黒塗り」にしたのは、まったく理由がない。市役所の幹部職員は公人である。教育部長も、市民部長も、市民に顔写真を見せられないというのである。いかなる不都合があるのだろうか。顔を隠さなければならない、やましい仕事をしているわけではあるまい。

市の幹部職員の顔写真を「個人情報」だとするのは、全国の自治体の中で大津市だけだろう。同じ「60周年記念誌」について、市議会の事務局はすべて公開した。「黒塗り」は一切なし。当然のことである。

自治協働課による「黒塗り」に対して、今年4月28日に「公開すべきである」との異議申立てがなされた。通常は情報公開審査会が審議することになる。自治協働課は「部分公開 の処分取り消し決定書」を出した。理由として、「市議会議長が2015年3月6日付で既に公開しているため」としている。自らの判断の誤りを認めようとせず、市議会が公開してしまったから仕方がない、と言い逃れをする。なんとも姑息である。

自治協働課と市議会議長への情報公開請求は、同日である。同じ庁内で同日に請求したものが、一方は公開、一方は部分公開。そんな摩訶不思議な判断を大津市は市民に提示した。市民へ開示する前に、市議会事務局と自治協働課で、写真を全部「公開」するか、一部を「黒塗り」とするか、協議したが、統一できなかったと、市政情報課が釈明していた。つまり、市議会事務局が「公開」という決定を出したことを、自治協働課は知りながら「黒塗り」を貫いた。自治協働課は自治連合会に対して、強い「忠誠心」を示した、とも言える。

こうして、自治協働課は「黒塗り」を貫いたはずが、市民から異議申立てを起こされた途端、さすがに「黒塗り」はまずいと思ったのだろう。まるで議会事務局の公開を知らなかったかのように装い、「公開するべきと判断した」と前言を引っくり返した。異議申立てをしなければ、自治協働課の独自路線の「黒塗り」は維持されていた。

そもそも自治協働課は、市民部の一組織である。その名称の通り、市民部は市民のために存在するのではないか。それとも、大津市自治連合会の利益のために存在するのか。実態は今回の「黒塗り」が示す通りである。

 

参考記事1「自治連合会長の顔写真が不開示に/市幹部の顔も黒塗り/市自治協働課/大津市の情報公開№1」

参考資料1「60周年記念誌冊子/教育部長の顔写真」大津市自治協働課の黒塗り部分公開

img004